幻の湖に潜むもの 盗賊団に、宝物庫の宝を盗まれた王様は、とても怒って、兵を率いて、すぐにアジトへ向かったの。 だけど…心配よね。わたしたちもついて行っちゃおうっと! でも、考えてみたら、幻の湖のこと、なんにも知らないのよね… “幻”って言うくらいだから、あるようでないような、そんな湖なんだろうと思うんだけれど… でも、その答えは意外とあっさり出たわ。 お城の地下牢へ行ってみたら、ひとりの男がぐったりしていたの。 なんだか、王様が兵士をほとんど連れて行っちゃったせいで、牢番もいなくなって、 ご飯がまだもらえていないらしいの。 牢屋に人がいるのに出かけちゃうなんて…無用心だわ! でも、かわいそうだから、わたしは持っていたビスケットをあげたの。 そうしたら、お礼にいいことを聞いたわ。 幻の湖は、東の岩山を越えた先にあること。目の前に見えていても、すぐに逃げてしまうこと。 それから、彼はわたしに、水の入った小さなビンを渡してくれたの。 彼に言わせれば、「逃げるものを追ってもムダ。エサをまいてかかるのを待つ!」。 この小ビンの水は、“呼び水”と呼ばれるもので、逃げた湖を呼び寄せるアイテムみたい。 彼がなんでこんな物を持って牢屋に入っているのかちょっと疑問なんだけど、 わたしたちは彼に、丁寧にお礼を言ったわ。 さぁ!さっそく、幻の湖に出発よ! ちょっと時間はかかったけど、幻の湖はすぐに見つかったわ。 途中で、いもむしのまもの(キャタピラー)と、とさかへびに出会って、仲間にしたの。 名前はそれぞれ、パズー(♂)、ルージュ(♀)。牧場に行ってもらうことにした。 王様たちは、一歩先に来ていたのだけれど… あっ!湖が逃げて行くわ! いきなり湖が消えたので、王様たちは右往左往している。 ここで、呼び水をつかうのね! わたしは、小ビンの栓を引き抜き、あたりに水を振りまいた。… 気がつくと、わたしの目の前には、湖が広がっていた。 …湖というよりは…池みたいなんだけど… この際、あんまり気にしないことにするわ! 湖の周りを回ってみると、…あったあった! 木の枝をたくさん組み合わせて作った家が、でんと構えていた。 これが、盗賊団のアジト――元、ビーバーのまもののお家ね。 家の周りには、たくさんのビーバーのまものがいて、きゅっきゅっ鳴いていた。 早くお家を取り戻してあげなきゃ! わたしたちは、大きく息を吸って、アジトに乗り込んだ。 中には、色黒の、人相の悪い男がいたわ。彼が、モンスターマスター兼盗賊団首領かしら? 話しかけてみると、彼はわたしたちと同じ世界から来ていること、イセカイの宝を集めていること、 その宝を持っていくと、最強のまものをくれる人がいるということを話してくれたわ。 だけど…、盗むっていうのは許せないわね! けれど、彼にしてみれば、わたしたちは邪魔者。すぐにまものをけしかけてきたわ。 何かしら…全然見たこともない、ランプのようなまもの。 でも、とにかく勝たなくっちゃね。 ランプは、スクルトなんかをつかって、とても手強いのだけど。 相手は一匹、こちらは三匹。負けられないわ! …数の暴力だなんていわないでっ! 王様たちがやってくる頃には、ランプはわたしたちの仲間になっていたわ。 名前はセロリ(♂)。…うーん、外見とそぐわない気もするんだけど…まぁいいわ! リッケンを牧場に返して、かわりにセロリにメンバーになってもらった。 そのスキに…なんてすばしっこいのかしら!首領はいなくなっていた。 それと入れ替わりに、王様たち。 遅いわよ!! 王様たちは、わたしたちがここにいることを不思議に思ったらしいけど、 とにかく、盗賊団の残りをとっつかまえるために、奥に押し入ったわ。 しばらく、どたばたと争う音がしたあと、兵士が盗賊たちに縄をかけて、厳重に周りを固めて出て行った。 これで一見落着ね! 一番最後に、王様が出てきて、わたしたちにうみなりのかねを渡してくれた。 …これがうまく、マルタのへその代わりになればいいんだけど… 「おい聞こえるかイル!不思議な力を感じたぞ!」 どこからともなく、ワルぼうの声が。 「いいか、マルタに呼び戻すから、じっとしているんだぞ!」 声が途切れるが早いか、この世界に来たときと同じような、変な感覚がおそってきて…―― ――気がついた時には、わたしたちはマルタに戻ってきていた。 …ああ、なんだか、まぶたが重いわ… 戻ってきて後のことは、また今度書くことにするわね。 おやすみなさい。 ■ 次の日記へ ■□ 前の日記へ ■□■ イルの冒険INDEXへ |