♪ぶっつけ本番旅日記♪partI
モンスターマスター・イル


住んでいた町を離れて、わたしたち一家は、マルタという国に移り住むことになった、ってことは、
ちょっと前の日記にも書いたことだけど。
今日が、そのお引越しの日。
昨日の晩から、荷物や、牧場の道具なんかを運んだら、なんだか疲れちゃったわ。
特に、牧場のまものたちが大変だったのよねー。
まものたちってば、新しいところに行くもんだから、はしゃいじゃってる子もいたし、
反対に、ものすごく不安そうな子もいた。 落ちつかせるのが大変だったよ。
でも、今日は、絶好のお引越し日和でよかった。
白いマストが、真っ青な空にくっきり浮かんで見えて、とってもきれい。
…マルタって、どんな国なんだろう。どんな人たちが住んでいるんだろう。お友達はできるかな。
この海の先に、マルタがあるんだとおもうと、なんだかドキドキしちゃうね。
そのあと、お兄ちゃんが来て、お父さんが呼んでるよ、っていうから、
船尾にいる、お父さんのところへ行ったわ。そしたら、
「これからは新しい生活が待っているんだ。お前も妹だからって、いつまでも甘えてちゃだめだぞ。」
だって。 わたし、甘えてるかなぁ…?
船首にもどると、お兄ちゃんが、うれしそうに、「もうすぐマルタが見えるって」って教えてくれた。
うふふ、きっとお兄ちゃんも楽しみにしているんだね。


ひゃぁー、ひろーい!
これが新しい牧場なのね?
芝生はやわらかいし、海は近いし、真ん中には小さな泉もあるし。
とってもいい牧場ね! …ただ、ちょっと暑すぎるような気もするけれど、まぁ、南国だものね。
うれしくって、荷物をほっぽって、おにいちゃんと駈けまわっちゃったわ。
「こら、お前たち!遊んでばかりいないで、母さんを手伝いなさい!」
ごめんなさ〜いっ!


お母さんは、新しいおうちで、荷物の片づけをしていた。
新しいおうちは、牧場の西の端っこ。小さな家だけど、とてもかわいい家よ。
うわぁ、お母さん、もうほとんど片付けちゃってる。すごいなぁ。
お母さんに、何かお手伝いない?って聞いたら、
おばあちゃんから届いているはずの木の実パイを、預かり所に行ってもらって来て、だって。
おばあちゃんの木の実パイ、おいしいんだよね〜。
一晩、山盛りの木の実をブランデーに漬けておいて、パイの中身にするのよ。
早く食べたいな。じゅる。
…ついでに、マルタの探検もしちゃおうかな、へへっ。


牧場を出たら、なんだか変なヤツらに出会ったの。
ひとりは、金髪の男の子。いたずらっこみたいな感じ。
もうひとりは…まもの?よくわからないけど、まんまるもこもこの変な人だった。
彼らは、わたしたちを見て、「面白くなりそうだ」だって。なんなのかしら。


メインストリートに出ると、いろいろな人がいたわ。
みんな、よく日に焼けていた。島中が天然日焼けサロンみたいだものね。
…紫外線とか、大丈夫なのかしら…
ここでも、さっきのふたりを見かけたわ。やっぱり、第一印象の通り、いたずらっこだった。
おばさんの目を回してみたり、行商のおじさんから売り物を持って行っちゃったり。
よくみんな、怒らないなぁ。
話を聞くと、男の子は、カメハという名前で、この国の王子様。
まんまるもこもこは、ワルぼうという名前で、この国の精霊なんだって。
だから、何をされても怒れないんだって言ってたわ。 …それ、ちょっと違うんじゃないかなぁ…
それにしても、カメハ王子だなんて、ものすごく南国チックな名前よね。


そうなの。
わたしたちも、このふたりにいじわるされて、…そしてあんなことになっちゃったんだわ!
おばあちゃんの木の実パイを、預かり所で受けとって、牧場に戻ろうとしたら、
カメハ王子とワルぼうが、帰り道に通せんぼして、帰らせてくれない。
わたしたちも、あっちにいってみたり、こっちへまわってみたり、いろいろしたんだけど。
わたしたちが、通してよ、って言ったら、それには答えてくれない代わりに、
「いい匂いがする!」って言って、木の実パイを奪おうとしたのよ!
一生懸命、取り戻そうとして引っ張りあいっこしたんだけど、はずみで、井戸の中に落っこちちゃった!
ワルぼうとカメハ王子が飛び込んでいったから、わたしたちもあわてて追いかけた。
大切な木の実パイ、渡さないんだから!!


…あわてて飛びこんだはいいけれど、どうしてこの井戸、水がないのかしら… これは謎だわ…
でも、水がなかったおかげで、木の実パイも無事ね。よかった、ふやけなくて。
けれど、そのかわりに、ワルぼうとカメハ王子が取り合いをしていた。
どっちが食べるかで、争っているらしい。
仲良く分ければいいのに。…って、ダメよダメ!
お兄ちゃんも争いに加わって、なんだかメチャメチャ。
その時よ、お兄ちゃんがパイを取り戻した、その時。
勢いで、カメハ王子がすっ飛んで、なにか…白い物の上に落ちたの。
そして、その白い、丸いものは、壊れて粉々になってしまったわ。


これが、こんなに大変なことになっちゃうとは、夢にも思わなかった。
カメハ王子が壊したモノ、それは、“マルタのへそ”と呼ばれるもので、
マルタの国の生命力が飛び出してしまわないように、穴にふたをしていたものだったの。
マルタの国は、ヤシの木に支えられた浮島なんだけれど、
生命力がなくなったら、島ごと沈んでしまうんですって!
ぽんぽん飛び出すマルタの生命力にびっくりして、
ワルぼうがあわてて自分でへその代わりをすることにしたのだけれど、
そんなこと、いつまでもしているわけにはいかないし…。
とにかく、へその代わりを探さなきゃいけない。
ワルぼうに聞いたら、へその代りのモノは、イセカイというところにあるというの。
だけど、イセカイには、まものがうじゃうじゃ。モンスターマスターでなければ、とても行くことができない。
と、いうわけで、モンスターマスターを探しに行くことにしたのだけれど…
ワルぼうって、カメハ王子とつるんで、いたずらをしまくってたでしょ?
だから、だれも信じてくれないのよ!
わたしたちが一生懸命説明しても、おとなは笑うばっかり。
どうしよう!
そのことをワルぼうに話したら、なんと!わたしたちに行けって言うのよ!
確かに牧場のまものたちはかわいいけれど、イセカイのまものは狂暴なんでしょう?
そんなの、できっこない!
でも、やるしかないのよね…、そうよ、わたしたちがどうにかするしかないんだわ!
ところで、…
この非常事態に、カメハ王子ったら、どこに行ったのよ!?


お家に帰って、もう一度、お兄ちゃんと話し合ってみることにしたの。
でも…、わたしたちが見つけるしかないのはわかっているけど、
ふたりで出かけたら、お母さんやお父さんが心配するし…
悩んでいたら、そこにやってきたのが、番スラのスラッシュ
妙に言葉の悪いスラッシュが出した提案は、どっちかひとりがイセカイへ行く、ってことだった。
まぁ…スラッシュの言うように、ひとりが残れば万事解決、なんて行かないような気がするけど…。
で、どっちが行くか、ってことだけど。
結局、私が行くことになった。
お兄ちゃんに任せるんじゃ、なんだか心配だし…
というわけで。
明日はスラッシュを連れて、イセカイに出発するぞ〜!

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