西の国のお姫様 やっと国境の封鎖が解けたようだから、さっそく西の国へ行くことにしたわたしたち。 国境に着いてみると、炭鉱夫さんたちは、まだ金を掘っているようだったわ。 本当に金はあれだけだったのか、北と西とで協力して、もう一度掘ってみることにしたんですって。 金が見つかるかどうかは分からないけれど、北と西とが仲良くなってよかったわ! でも、これで、金がまた見つかって、 北と西とで取り合いっこ なんてこと、ないでしょうね… 無事、国境を越えたわたしたちは、すぐに町を見つけた。 名前はウィストン。港町よ。 この町にはいってから、“ユナ姫”という名前をそこかしこで聞いたわ。 *「これはウワサですが、最近ユナ姫の様子がどうもおかしいということです。 一体どうなされたというのでしょうか…」 *「ユナ様はこのところあまり元気がないらしい。 何か悩んでおられるのか…年頃になられたからなぁ。」 *「ユナ姫様は毎日部屋に閉じこもっていて、王様もほとほと困り果てているようだよ。」 *「西の城に様々な人や贈り物が集まっている。 ユナ姫を喜ばせたものに褒美が出るからだってさ。」 *「お姫様を喜ばせたら、何かもらえるんだって! …いっぱい挑戦者が城にきているらしいよ。」 *「南東の森にユナ姫様が向かわれるのを見かけたの。 さっそうと馬に乗りこなしてて、とてもすてきだったわぁ。」 *「この間町にきたきこりが、変なことを言っておったのぅ。 町の南の橋を渡った先にある深い森の中で、女の子の幽霊に追いかけられたそうじゃよ…」 まぁ、最後のは、ユナ姫と関係ないのかもしれないけれど。 ふぅん…何があったのか、よくわからないけれど、そのユナ姫に会いに行ってみましょ。 お城は、川伝いに西、ということなので、一休みしてからそっちへ行ってみることにした。 西のお城の名前は、ウエスターニャ。 お城に着くと、芸人や商人がたくさんいたわ。 この人たち、みんなユナ姫を喜ばせるためにきたのね。 お城の入り口に、立て札があったから、見てみると、 “――ユナ姫を喜ばせる自信があるものは城に来られたし。 みごと笑顔を取り戻せたなら、望みのものを与えよう!――” だって。 へぇ…なんて思っていたら、後ろからカメハ王子がやってきたわ。 あら、無事だったのね。 カメハ王子は、偉そうに、 「久し振りだな、イル!こんなところにいたのか? 城からは無事、抜け出せたみたいだな…恩に着ろよ。」 出口を探したのはわたしじゃない! 「いいか、この前はお前に手柄を譲ったが、今回のお宝は必ずオレがもらうからな!」 …島が沈む一大事だし、 誰が手柄を立てるかなんて言ってる場合じゃないと思うんだけど… そしてカメハ王子は、並んでいた芸人さんたちを押しのけて、お城の中に入ってしまったわ。 わたしたちも行ってみましょ! *「ユナ姫様は、本当はとても元気な方なのじゃ。 一体どうしてこんなふうになられたのか、合点がいかん。」 *「ユナ姫はどうしたというのだ? あれではまるで、魂を抜き取られた人形のようではないか…」 *「ユナ姫様は、朝起きるとすぐに、城を出て遊んでおられた。 …それが最近では、ずっと部屋に閉じこもっておられる…」 お城の人たちも、困り果てているみたいね… わたしたちは、謁見の間まで行ったわ。 王様の前で、カメハ王子が踊っている。 な、なんてヘタなの… 王様も、困惑したみたいで、 「もうよい…そなたの踊りはよくわかった。さがるがよい!」 なんて、カメハを追い払ったわ。 わたしは、王様を見た。 ロマンスグレーのおじさま、って感じで、ちょっとかっこいいんだけど、すこしやつれ気味。 その隣、綺麗に着飾ったブロンドのお姉さん…あれがユナ姫? 笑ったら、さぞかし可愛らしいだろう顔なのだけれど、ぼんやりとうつろな目で座っている。 王様は、わたしたちに気がついて、声をかけてくれたわ。 「して、何を見せてくれるのじゃ?」 わたしは芸人じゃないわ! だけど、…ここまで来て、何もしないで帰るっていうのも悪い気がするわね。 仕方ないわ…砂漠で身につけた火の輪くぐりでもするわ! このメンバーになってから、火の輪くぐりをやったことはなかったのだけど、 みんな、なぜか心得ていて、うまいことやってくれたわ。 ちょっとスルメの匂いがした気がしたんだけど…気のせいよね!(それ、イカルガ…?) 王様は、とても喜んでくれたわ。 「おお、すばらしかったぞ! お前もそう思わぬか?」 そう、隣のユナ姫に話しかけたけれど、 「………………。」 王様は、大きなタメイキをついて、 「はぁ…これでもだめか。 そなたもよくやってくれたが、ユナを楽しませることはできなかったようじゃのう。 以前はよく笑う、明るい娘じゃったが、城を飛び出していきおって、戻ってきたらこのありさま。 一体どうしたのやら…原因がわからんのじゃ。」 う〜ん…困ったわね… わたしたちは、いったんお城を出たわ。 お城の外は閑散としていた。 だれひとり、ユナ姫を喜ばせることができなかったから、挑戦者たちがみんな帰ってしまったのね。 わたしは、これからどうしたらいいのかしら… …そういえば、ウィストンの町で、ユナ姫が南の森に行ったのを見た、というひとがいたわね。 じゃぁ、南の森になにかあるかもしれないわ!行ってみましょう! ■ 次の日記へ ■□ 前の日記へ ■□■ イルの冒険INDEXへ |