♪ぶっつけ本番旅日記♪partI
西の国のお姫様


やっと国境の封鎖が解けたようだから、さっそく西の国へ行くことにしたわたしたち。
国境に着いてみると、炭鉱夫さんたちは、まだ金を掘っているようだったわ。
本当に金はあれだけだったのか、北と西とで協力して、もう一度掘ってみることにしたんですって。
金が見つかるかどうかは分からないけれど、北と西とが仲良くなってよかったわ!
でも、これで、金がまた見つかって、
北と西とで取り合いっこ
なんてこと、ないでしょうね…


無事、国境を越えたわたしたちは、すぐに町を見つけた。
名前はウィストン。港町よ。
この町にはいってから、“ユナ姫”という名前をそこかしこで聞いたわ。
*「これはウワサですが、最近ユナ姫の様子がどうもおかしいということです。
一体どうなされたというのでしょうか…」

*「ユナ様はこのところあまり元気がないらしい。
何か悩んでおられるのか…年頃になられたからなぁ。」

*「ユナ姫様は毎日部屋に閉じこもっていて、王様もほとほと困り果てているようだよ。」

*「西の城に様々な人や贈り物が集まっている。
ユナ姫を喜ばせたものに褒美が出るからだってさ。」

*「お姫様を喜ばせたら、何かもらえるんだって!
…いっぱい挑戦者が城にきているらしいよ。」


*「南東の森にユナ姫様が向かわれるのを見かけたの。
さっそうと馬に乗りこなしてて、とてもすてきだったわぁ。」


*「この間町にきたきこりが、変なことを言っておったのぅ。
町の南の橋を渡った先にある深い森の中で、女の子の幽霊に追いかけられたそうじゃよ…」


まぁ、最後のは、ユナ姫と関係ないのかもしれないけれど。
ふぅん…何があったのか、よくわからないけれど、そのユナ姫に会いに行ってみましょ。
お城は、川伝いに西、ということなので、一休みしてからそっちへ行ってみることにした。


西のお城の名前は、ウエスターニャ
お城に着くと、芸人や商人がたくさんいたわ。
この人たち、みんなユナ姫を喜ばせるためにきたのね。
お城の入り口に、立て札があったから、見てみると、

“――ユナ姫を喜ばせる自信があるものは城に来られたし。
みごと笑顔を取り戻せたなら、望みのものを与えよう!――”


だって。
へぇ…なんて思っていたら、後ろからカメハ王子がやってきたわ。
あら、無事だったのね。
カメハ王子は、偉そうに、
「久し振りだな、イル!こんなところにいたのか?
城からは無事、抜け出せたみたいだな…恩に着ろよ。」

出口を探したのはわたしじゃない!
「いいか、この前はお前に手柄を譲ったが、今回のお宝は必ずオレがもらうからな!」
…島が沈む一大事だし、
誰が手柄を立てるかなんて言ってる場合じゃないと思うんだけど…
そしてカメハ王子は、並んでいた芸人さんたちを押しのけて、お城の中に入ってしまったわ。
わたしたちも行ってみましょ!


*「ユナ姫様は、本当はとても元気な方なのじゃ。
一体どうしてこんなふうになられたのか、合点がいかん。」

*「ユナ姫はどうしたというのだ?
あれではまるで、魂を抜き取られた人形のようではないか…」

*「ユナ姫様は、朝起きるとすぐに、城を出て遊んでおられた。
…それが最近では、ずっと部屋に閉じこもっておられる…」


お城の人たちも、困り果てているみたいね…
わたしたちは、謁見の間まで行ったわ。
王様の前で、カメハ王子が踊っている。

な、なんてヘタなの…
王様も、困惑したみたいで、
「もうよい…そなたの踊りはよくわかった。さがるがよい!」
なんて、カメハを追い払ったわ。
わたしは、王様を見た。
ロマンスグレーのおじさま、って感じで、ちょっとかっこいいんだけど、すこしやつれ気味。
その隣、綺麗に着飾ったブロンドのお姉さん…あれがユナ姫?
笑ったら、さぞかし可愛らしいだろう顔なのだけれど、ぼんやりとうつろな目で座っている。
王様は、わたしたちに気がついて、声をかけてくれたわ。
「して、何を見せてくれるのじゃ?」
わたしは芸人じゃないわ!
だけど、…ここまで来て、何もしないで帰るっていうのも悪い気がするわね。
仕方ないわ…砂漠で身につけた火の輪くぐりでもするわ!
このメンバーになってから、火の輪くぐりをやったことはなかったのだけど、
みんな、なぜか心得ていて、うまいことやってくれたわ。
ちょっとスルメの匂いがした気がしたんだけど…気のせいよね!(それ、イカルガ…?)
王様は、とても喜んでくれたわ。
「おお、すばらしかったぞ!
お前もそう思わぬか?」

そう、隣のユナ姫に話しかけたけれど、
「………………。」
王様は、大きなタメイキをついて、
「はぁ…これでもだめか。
そなたもよくやってくれたが、ユナを楽しませることはできなかったようじゃのう。
以前はよく笑う、明るい娘じゃったが、城を飛び出していきおって、戻ってきたらこのありさま。
一体どうしたのやら…原因がわからんのじゃ。」

う〜ん…困ったわね…


わたしたちは、いったんお城を出たわ。
お城の外は閑散としていた。
だれひとり、ユナ姫を喜ばせることができなかったから、挑戦者たちがみんな帰ってしまったのね。
わたしは、これからどうしたらいいのかしら…
…そういえば、ウィストンの町で、ユナ姫が南の森に行ったのを見た、というひとがいたわね。
じゃぁ、南の森になにかあるかもしれないわ!行ってみましょう!

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