♪ぶっつけ本番旅日記♪partI
夢の魔物


こんにちは!
今日は、イーストリアのお城の北にあるという山に、冬眠草を取りに行くわよ!


その山は、すぐに見つかったわ。
へぇ…けっこう高いのね…。
でも、山というよりは、ガケって気がする。
それより、なんだかハチのでっかいのみたいなのがぶんぶん飛んでいるのが気になるんだけれど…。
考えていても仕方ないから、さっそく登ってみることにしたわ。
それにしても…カミナリがすごいわね…このまま雨が降ってくれるといいんだけれど。
あ、コッチの話、コッチの話。


下から見えていたでっかいハチは、ヘルホーネットという魔物だったわ。
ガケをよじ登っている間、後ろから襲ってくるものだから、一時の油断もできない。
でもこれ…やっぱり山登り、というより、

ロッククライミングよね…
でも、だれかが登ったことがあるのか、ところどころに足場があるから、なんとか登れる。
まぁ、足場が途中で切れちゃっているところもあって、
最後まで足場つけてよ
って気がしないでもなかったけれど、とにかく、てっぺんまで登ることができたわ。
てっぺんの、がけっぷちギリギリくらいのところに、小さく青いものが、雪の中に見え隠れしていたわ。
ノフォーの学者さんによれば、冬眠草は青い花をつけるということ。
あの青いのは冬眠草の花かしら?
近くへ寄ってみて、そっと雪を払ってみると、そこには、青い花をつけた草が一面に群れていた。
やった!これが冬眠草だわ!
さぁ、これをひとかぶ持って、学者さんにお薬にしてもらいましょう!


学者「おお!その花はまぎれもなく冬眠草!
それはそのまま葉っぱを食べるだけで効き目が出ますよ。
食べたとたん、それはぐっすりと安らかに眠れるんです。」


…なんか、そういう言い方されると、

死んじゃうみたいなんだけれど…
なんだ、これ、調合する必要はないのね。
じゃぁ、このまま、ヘレン女王様のところへ持っていきましょう!
…でも、それなら、

“薬”って言わないよぅ…


わたしたちは、イーストリアのお城に戻ってきた。
さっそく、ヘレン女王の部屋の前にいるお姉さんに、事情を話す。
お姉さんは、薬を持ってきたと聞いて、飛びあがって喜んだわ。
そして、わたしたちをヘレン女王の部屋へ通してくれた。
天蓋付きの豪華なベッドで、ヘレン女王は横になっていた。
目を開けてはいるのだけれど、目は血走っているし、頬もこけて真っ青。
これは大変だわ。
わたしは大急ぎで、ヘレン女王の口に、冬眠草の葉っぱを含ませた。
なんとか、女王様はそれを飲みこんでくれた。そして、ふと、眠そうな顔をして、目を閉じる。
よかった…きっとこれでよくなるわ!
そのとき。
「…それは困るな…」
頭上から、なんだか眠たげな声がしたわ。
見ると、女王のベッドの天蓋の上に、羽根の生えたウシがいたわ。

「湖を囲む三つの国を混乱におとしいれるため、女王の夢にもぐりこんで悪夢を見させていたが…
そんな薬を飲まされては計画が台無しだ!!
お前は私の邪魔をするというのだな?」


やっぱり…ヘレン女王の夢に、こいつがもぐりこんでいたのね!許さないわ!
この国を守るためにも、頑張って倒さなくちゃ!


「ななに…こんな子供の連れている魔物に負けるとは…
他の仲間を倒したのもお前たちの仕業だな!
さっそく帰って我が王に知らせなければ!!」


やっつけられて、なお元気よね…
魔物が消えた後、ヘレン女王が目を覚ました。

「久し振りによく眠れたわ。」

早ッ!!
女王が、わたしたちを不思議そうに見たせいもあって、お姉さんが今起こったことを女王に説明した。
女王は、上体を起こしてから、軽く頷いて、

「そうでしたか…いろいろと迷惑をかけましたね。
私が悪夢を見てうなされるようになってから、こんなにも安らいだ目覚めはありませんでした。
こころから感謝します。ありがとうございます!」


へへっ。やっぱり、お礼言われると嬉しいね。
女王は、わたしの持っているせいれいのしるしに気がついた。

「あなたの持っているのは、せいれいのしるし…そうですか。
すべては精霊様のお導きだったのですね。」


精霊様は何もしていないわ!!
…まぁ、いいでしょう。
とりあえず、国も平和になったことだし、精霊の泉に戻って、精霊に報告しましょう!

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