♪ぶっつけ本番旅日記♪partI
塔の中の惨劇


大賢者ウゴールに無視されたことで腹を立てたクリスに連れられて、
わたしは、フントの村の奥にある、古びた塔の前に立った。
そこにいた魔物たちと話をしてみると、近頃、大きなカミナリが頂上に落っこちて、
塔のてっぺんが崩れ落ちてしまったということ。
はしごをかけて、てっぺんの様子を見ようとしている魔物もいたのだけれど、
崩れているせいで、はしごをかけることができないみたい。

クリス「これはチャンスよ、イルイル!
『わたしたち、塔の調査に来たんだ』って言えば、すんなり通してくれるんじゃない?」


それ、セコくない?
まぁ、クリスの冗談はこっちに置いといて、わたしたちは、塔の入り口である扉の前に立ったわ。
そこを守っていた魔物によれば、野生化した悪しき心を持った者は、塔の中に入れないらしい。

クリス「大丈夫よ!
だって、イルイルの魔物は、全員、タマゴから育てているでしょう?
野生化はしていないはずよ!」


うん、それはそうなんだけど…
わたしが心配しているのはクリスのことであって…

クリス「どぉゆぅ意味よそれッ!?」

…ま、結局、難なく塔の中に入れたわけだけれど、頂上に着くまで、クリスの機嫌は直らなかった。


頂上に着くと、それまで仏頂面だったクリスが、大声を上げた。

クリス「イルイル!見てっ!」

クリスの指差す方向には、大きなヘルコンドルが一匹。
足に、なにやら光る玉をつかんでいる。

クリス「もしかして、あれが光のオーブじゃないの!?」

そう。それは、そうとしか思えないような色つやを放っていた。

グェェェ!!

ヘルコンドルは、気味の悪い声で一声鳴いてから、わたしたちを小ばかにしたように頭上を旋回し、
そのまま、どこかへ飛び去った!
どうしよう!オーブが盗まれたわ!


クリス「なんて鳥なの!?ひとのものをよ・こ・ど・りするなんてっ!!」

…クリスに渡るよりはマシだったかもしれないわね…


仕方ないので、わたしたちは、そのまま、塔を降りた。
そのまま、大賢者ウゴールの墓へ行く。
オーブが盗まれたことを、とりあえず報告しておいたほうがいいかもしれないからね!
大賢者ウゴールの墓の前で、彼の名前を呼んでみた。
はたして、彼は姿を現わしたわ。

クリス「ひょっとして…ヒマなのかしら…?」

ウゴールは、絶妙なタイミングでクリスのツッコミを避けて、眠そうな声で言ったわ。

ウゴール「なんじゃ、またおぬしらか…」

なにか言いたそうなクリスは横に押しやっておいて、わたしは事情を説明した。
今度ばかりは、さすがにウゴールも慌てた。

ウゴール「それはまことの話か!?心悪しき者があれをもつと…うむむ…」

ウゴールは難しい顔でしばらく、考え込んでいたけれど、ふいに、ぽん、と手を打って、

ウゴール「そうじゃ!おぬしらがオーブを探してくれぬか?」

クリス「う〜ん…やってあげないこともないけど…おだちんは?」

やっぱし、そういくのね…。
しごく真面目なクリスに、ウゴールは戸惑ったようだったけれど、

ウゴール「…まぁ、おだちんはやれないが…そのかわりのものを贈ろう。
この世界では、人間の姿は目立ちすぎるだろう…。
墓の裏を調べるがよい。」


そういって、静かに消えたわ。
お墓の裏…
わたしたちが裏に回って調べてみると、お墓の下のほうに、くぼみがあって、
そのなかに一本の杖が隠されていたわ!
これは何かしら?

クリス「振ってみたら?」

それもそうね!
わたしは、クリスに向かって、思いっきり杖を振った。
もこもこと煙みたいな白いものがわきあがって…


クリス「ぬぁぁんでわたしで実験するのよッ!?

すさまじい勢いで、わたしに突っかかってきたのは、…

…ようかいぎょ!?

クリス「え!?なんで!?なんでわたしがカプリみたくなっちゃってるの!?」

あ、そうか!
これって、変化の杖なんだわ!
クリスの目の前にいるのがカプリだったことを考えると、
この杖を振ると、目の前にいる魔物に変身できるようね!

クリス「ふうん…確かに、この世界では役に立つかもしれないけど…
これっておだちんじゃなくて、必要経費よね!?」


こだわりすぎだってば…
っていうか、それ以上言うと、
クリスってがめついのね
って、読者さんに思われちゃうよ?

クリス「そ、それもそうね…じゃあ、その件に関しては、もう言わないことにする。
それはいいんだけど…
いつになったら元に戻れるのわたし!?


さ、さぁ…どうだろ…?


とにかく、放心状態のクリス@ようかいぎょを引きずって、わたしたちは村を出た。

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